下塗り

⑤下塗り

下地処理と同様に、3種類の外壁種類別に解説致します。

 a.モルタル壁下塗り

 モルタル壁の下塗りには微弾性下塗り塗料を使用します。この塗料は同じく下塗り材であるシーラー(接着専用で水のような粘度の塗料)とセメント系フィラー(ひび割れを埋めることができる高粘度の塗料)の中間的な塗料で、微弾性性能(多少の柔軟性)も備えた、多くの機能を合わせ持つ下塗り材です。

微弾性下塗り材


 既存壁の劣化が著しく、微弾性下塗り材だけでは密着性が不十分と判断した場合は、密着性に特化した下塗りシーラーを塗装してから微弾性下塗り材を塗装する【下塗り2回塗り】も行いますが、通常の範囲で劣化したモルタル壁には微弾性下塗り材1回塗りで充分機能を発揮します。

 微弾性フィラーの施工注意点は【塗膜厚】です。
下塗りのみならず中塗り・上塗り・屋根塗装、すべてに言えますが、特に微弾性フィラーの厚みは重要です。
摩耗して薄くなったゴムが切れやすくなるように、微弾性塗料も同様で、薄い塗膜は断裂しやすく、反対に厚みが増すほどに柔軟性が保たれ、モルタル外壁の亀裂に追従してひび割れを防いでくれます。

塗料メーカーが指定している標準使用量は、1㎡当たりの使用量範囲が0.3kg~1.5kgとなっており、なんと!最少使用量と最大使用量では5倍も差があります。このことから見積書で【微弾性下塗り塗装】と記載されていても、最少使用量では最大と比較して5分の1程度の性能しか発揮出来ないということもありえます。

 

微弾性フィラー塗布

微弾性フィラー塗布状況

微弾性フィラー塗布後超接写

微弾性フィラー表面マクロ撮影

 グリーンペイントではお客様のご自宅前で見積書記載の塗料を搬入・撮影して、完了報告書と共に工事記録をお渡ししていますが、その写真には下塗り材を何缶使っているかも確認出来るようになっています。
微弾性フィラーは、厚く塗装すると粘土が高い特性上、若干ローラーが滑るような状態になり、そのパターンが仕上がり塗膜に現れます。逆に薄く塗るとローラーパターンは現れず、一見するときれいに見えますが薄いフィラー塗膜なので微弾性機能は低くひび割れしやすいので、性能は大きく低下します。

↑写真のようなローラーが滑った跡は、厚い下塗りの証明です

 

 

 b.窯業系サイディング壁下塗り

 窯業(ようぎょう)系サイディングはモルタル壁とは違い、ひび割れのリスクが少ないので下塗りに厚みを持たせる必要がなく、広範囲に凹凸状の欠損が発生している場合以外は仕上がり美観に影響を与えることは少ないので、微弾性フィラーを使用することは少ないです。

 

カチオン系エポキシ浸透性シーラー


 窯業系サイディングの下塗りには【剥がれないこと】【既存塗膜を溶かさないこと】【通気性が高いこと】が求められます。これらの機能を備えている下塗り材が【水性カチオン系エポキシ浸透性シーラー】です。既存塗膜を溶かさず、通気性も高い水性系、剥がれない密着性を兼ね備えた下塗り材です。

 

劣化した窯業系サイディングの表面

洗浄作業で脆弱化した基材は吹き飛びます

窯業サイディング表面の拡大

吹き飛んだ欠損個所の拡大写真

 

高圧水洗浄で粉化あるいは密着不良を起こしている既存塗装膜は、水圧で吹き飛び、パサパサした劣化窯業系サイディング基材が露出します。そこに低粘度、水のような浸透作用のあるシーラーが素地まで浸み込み、浸透固着し安定した素地を作ってくれます。

 

カチオン系シーラー塗布後拡大

欠損部にシーラーが行き渡るよう意識して塗っていきます

浸透性シーラーが浸み込んでいます

脆弱化していた基材もシーラーでカチカチに固着しました

 

c.金属系サイディング壁下塗り

 金属系サイディングの下塗りには【金属によく密着すること】【サビの抑制力が強いこと】【既存塗膜を溶かさないこと】が求められます。各社塗料メーカー研究の成果から、最近の水性塗料の性能はどんどん上がっていますが、水系サビ止め塗料に関しては残念ながらまだ実用に耐えられる性能はありません。屋内使用するならまだしも、過酷な環境となる屋外使用は不適合です。
このことから金属系サイディングには若干の臭いは出てしまいますが弱溶剤系塗料を使用します。
溶剤成分の弱いタイプなので既存塗膜を溶かすこともなく強力にサビを抑制し、金属密着性も抜群です。

通常は下塗り1回で充分性能を発揮しますが、金属サイディング特有の風雨により付着物が洗い流されない箇所(詳しくは金属サイディング下地処理のページへ)については下塗りサビ止め1回、中塗り1回、上塗り1回の3回塗り通常仕上げの塗装膜厚ではサビの再発を完全に防ぐことは出来ません。

 

金属サイディングに弱溶剤エポキシサビ止め塗料
↑弱溶剤系下塗りサビ止め塗料の塗装

 

グリーンペイントではサビの再発予想個所に部分サビ止めを塗装してから、塗り残しが出ないように色違いのサビ止めを全面に塗装します。これによりサビ再発予想個所はサビ止め塗装2回塗り、中塗り、上塗りと合計4回塗りとなり、確実にサビの再発を抑えることが出来ます。

 

部分サビ止め

全面サビ止め

部分サビ止め塗装をしてから
別色で全面サビ止め塗装

 

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