下地処理

③下地処理

 

住宅の外壁には大きく分けて3種類あり、各外壁ごとに下地処理方法が違うので、その特徴や欠点も含めて解説致します。

a.モルタル壁の下地処理

 モルタル、コンクリート壁の下地処理工法としては、Uカットシーリング工法と補修材擦り込み工法の2種類があります。

Uカットシーリング工法はモルタルひび割れ個所をダイヤモンドカッターで、深さ10~15mm削り取り、そこに弾力性のあるシーリングを詰めてひび割れを防ぐ工法です。

Uカットシーリング工法

Uカットシーリング工法

シーリング用プライマー塗布

シーリング用プライマー塗布

 

ひび割れの再発を抑止する効果は高いのですが、コストが高く、一般的な住宅の外壁モルタル厚は15mm~20mmとなっているので、Uカットで削られた箇所はとても薄くなってしまいます。
このことから当工法は、鉄筋コンクリートのような充分に厚みのある外壁に多用される工法になります。

補修材擦り込み工法は、外部用の補修材をひび割れに沿って充填し、はみ出した部分を刷毛でぼかすことによりひび割れを埋め、処理個所を目立たなくする工法です。

補修材擦り込み工法

ひび割れに沿って補修材を充てんします

補修材擦り込み工法

補修跡をぼかします

ひび割れを削ることがないので充填剤の使用量は少なく、ひび割れの再発防止効果はUカット工法には劣りますが、その分コストは安く、住宅塗替え工事においては最も多く用いられるモルタル壁下地処理工法といえます。

 

補修材擦り込み工法

セメント系の建築材は共通してとても固く、伸縮性がほとんどないという特性を持っています。固いほど割れやすくなり地震、積雪荷重、太陽光による熱収縮、建物の構造、立地している地盤、新築時の作業工法等、モルタル壁に発生するひび割れについては発生原因が多岐にわたるため原因特定が困難になり、同様にひび割れ再発を完全に予防することも難しくなります。

 

すり込み補修完了
↑すり込み補修完了

 

ひび割れ発生原因が多岐にわたるというモルタル系外壁の最善メンテナンス工法として、

費用対効果に優れた補修材擦り込み工法で補修し、ひび割れ抑止効果のある微弾性下塗り材を厚く塗装することで、建物全体のひび割れ予防となります。

 

b.窯業(ようぎょう)系サイディング壁の下地処理

 窯業(ようぎょう)系サイディングは、セメント系の頑丈さと木質等、その他の断熱性を併せ持つ建材を混ぜて固形化させた建材です。
 比較的固いため、止め釘箇所の周辺に割れがよく見られるので、補修材を充填します。

止め釘周辺に割れが発生しやすい

止め釘が緩んで浮き上がることがあるので打ち直し、あるいはビスに交換します。
サイディング張り付け作業時に、止め釘が外壁表面とピッタリの位置に打ち込んであればよいのですが、職工の技能が低い場合、数mm食い込む形で釘が打ち込まれていると、食い込んだ厚み分の断面から浸水 ⇒ 凍結 ⇒ 膨張 ⇒ 欠損 ⇒ さらに多くの浸水 ⇒⇒と、寒冷地域では急速に劣化が進行してしまいます。

 

食い込んだ釘

止め釘周辺が浮いています

簡単に剥がれてしまいます

釘周囲から浸水して基材内部がボロボロになっています

打ち込み釘周辺から劣化

劣化個所から浸水して深く欠損しています

補修材充填

補修材で充填補修


サイディングの重ね合わせ部分はあいじゃくりと呼びますが、凹凸の形状から止め釘と同様の理由で水が溜まりやすく劣化が進行しやすいので、あいじゃくり隙間も補修材を充填します。

あいじゃくりに補修材を充填 あいじゃくりに補修材充填

また下の写真のように、窯業系サイディングの表面基材と塗装膜がボロボロに剥がれている状態を見かけることがありますが、このような場合は慎重な調査が必要となります。

 

慎重な調査が必要

メンテナンスサイクルをオーバーした等、経年劣化によるものであれば通常メンテナンスが可能ですが、サイディング内部に通気層不良と呼ばれる欠陥がある場合は塗装によるメンテナンスが出来ないことがあります。

現在ではほとんどないのですが、25~30年以上前に施工されたサイディングは日本国内にサイディングが普及し始めた年代で、しっかりとしたサイディング施工方法が確立しておらず、ハウスメーカー、工務店の施工方法によっては現在主流の通気工法がとられていないことがありました。

正規のサイディング貼り付け工法は
構造用合板 ⇒ 透湿防水シート(白色) ⇒ 胴縁 ⇒ サイディング
という順番です
サイディングの裏側と白い透湿防水シートの間に2cmほどの隙間を作り、この空気層が通気することでサイディング裏側の結露を防止してくれます。

透湿シートとサイディングの間に胴縁

通常の通気工法

正規の工法

白い透湿シートを貼ってから胴縁を取り付けます

 

一方、正規ではない工法、
構造用合板 ⇒ 胴縁 ⇒ アスファルトフェルトシート(黒色) ⇒ サイディング
という順番では、サイディング裏側にぴったりとフェルトシートがあるため通気不良となりサイディング裏側に結露することになります。

 

サイディングのすぐ裏に透湿防水シート

サイディング裏側にアスファルトフェルトシートがべったり付いています

サイディングのすぐ裏に透湿防水シート

胴縁の木とフェルトシートの順番が逆になっています

外気側と室内側には温度差があるため結露を発生させます。この場合、通気性がない工法のためサイディング裏側に結露が発生してしまうことが問題です。

 

寒い時期になると表側にも結露が発生します

表側の結露は問題ありません

外壁表側の結露は問題ありません

 

サイディング表側は塗装により防水処理されていますが、ほとんどの場合、裏側は未塗装になっています。

裏側に結露発生 ⇒ 未塗装個所からどんどん浸水 ⇒ 水分でサイディング表面の塗膜が押し出される ⇒ 塗装膜剥離 ⇒ 外気が凍結温度に達したときに凍結膨張 ⇒ サイディング表層から剥がれ落ちる

という仕組みでボロボロになってしまいます。

 

結露のためカビが発生

サイディング裏側にカビが発生

水分計

異常な含水率です

 

正規で貼りつけられたサイディングなのかどうかを見極めるには、
外壁サイディングがボロボロに崩れている、または、それが特定の部位のみに発生している等、外観上から判断することも出来ますが、それに当てはまらないパターンも存在するため、見積段階で判断できないこともあります。

サイディングが正しく張られていない

 

 c.金属系サイディング壁下地処理

金属系サイディングにはスチールサイディング、アルミサイディング、ガルバリウムサイディングと3種類あり、施工コストは高い順に、
1 アルミ
2 ガルバリウム
3 スチール
となり、普及率は
1 スチール
2 ガルバリウム
3 アルミ
と、スチールサイディングがコスパもよく、最も普及している一般的な金属サイディングとなります。

アルミ、ガルバリウムは劣化が遅く、30年以上メンテナンス不要のものが多くなっています。しかしメンテナンスとは、劣化予防のためだけに行うものではなく、「劣化していないのでどれだけ汚れていても構わない!」とはいかないもので、建物の美観上の観点からしてもメンテナンスの必要性は高いと言えます。

汚れが目立ち、メンテナンスが必要

 

金属サイディングの中で一般的に塗装メンテナンスの対象となるのがスチールサイディングで、スチールの鋼板の間に断熱材が封入されあり、断熱性に優れている特徴があります。

窯業系サイディングと比較すると、ボロボロになったり大きな欠損が発生することがなく、はっきりとした劣化が表れにくいのですが、スチールの性質に起因する劣化原因としてサビが挙げられます。

 

雨の当たらないところにサビが発生します

雨の当たらないところにサビが発生

軒下に発生することが多い

軒下に発生することが多い

 

通常は風雨の直接当たるところが劣化していくものですが、スチールサイディングの劣化はそれと違い、風雨の当たらないところにサビが発生し、放置しておくとボロボロになるくらいの腐食に繋がります。

 

雨が当たらないところにサビが発生

 

空気中の金属腐食成分(排気ガス、硫黄)等が埃や塵と共に外壁に帯電付着し、それが雨で洗い流されることなく蓄積し、空気中に含まれる湿度・水分と反応して金属腐食を進行させます。

 

 

金属腐食

金属腐食のマクロ撮影

金属腐食

凹凸状の不安定な物質なので、確実に除去しなければなりません

金属腐食は軒天井と壁の取り合い周辺、出窓下など雨のかからないところに発生し凹凸状の酸化鉄を形成しているので、目の粗い研磨材で除去します。

 

サビの除去

 

酸化鉄は不安定は物質なので崩れやすく、除去せずそのまま塗装すると後々形状が変化した時に隙間が出来、そこからまたサビが再発するので、確実に除去しなければなりません。

 

除去後

除去後のマクロ撮影

除去後

確実に除去されました

 

 

← 塗装工事の流れページへ戻る

 ④養生へ →

コメントは受け付けていません。