解説<5-b>

塗膜剥離は何故発生するのか? 塗料を希釈しすぎた場合

屋根の塗膜剥離が発生するもう一つの理由は、希釈剤の入れ過ぎによるものです。

希釈剤の入れすぎ
↑広範囲に剥離していることから希釈オーバーが考えられます

塗料にはメーカーが指定している希釈率というものがあります。
希釈しないで塗装すると、粘度が高すぎ塗膜中に気泡が残ってしまったり、刷毛やローラーの塗り跡が出てしまい綺麗な仕上がりにならないので、希釈は必要になります。

塗料粘度が高すぎると気泡が出ます
↑塗料粘度が高すぎることで発生した気泡跡

 

希釈率が高くなるほど塗料の流動性が向上し、作業者にとっては塗りやすい状態になり、塗料の伸びも良くなる為、同じ塗料量でより多くの面積を塗装出来るようになります。
そのため利益を優先にしている塗装業者は、希釈率を高くする傾向が強くなります。

高い希釈による剥離
↑高い希釈率に起因する塗膜の剥がれ方です

最低量の希釈が必要なことは説明させて頂きましたが、同様に希釈の最大量も指定されています。

屋根塗料カタログの希釈率
↑屋根塗料カタログ記載の希釈率。主剤塗料に対して5~15%以内と指定されています

塗料に対して5~15%ということは、最低が5%で最大が15%になります。
この屋根塗料の場合、15%を超える希釈剤を入れると塗料の性能を維持出来なくなり、密着性や塗膜強度が低下し剥離が発生します。
このことからも希釈率は最低希釈率に近い方が塗料性能は向上します。

指定された最大希釈率以上希釈すると、各種の問題が発生することは説明させて頂きました。
ではこの5~15%という比率をどのように計量しているか?についてですが、塗装業界では現在も計量器を使用する習慣が少なく、建築業種で同じく塗る作業の多い防水業界では、ほとんどの施工店で計量器を使用しています。
なぜ防水工事では計量器を使用するのに、塗装工事では計量器を使うことが少ないのか?
その答えは【直近で欠陥が発生するか、しないか】です。
防水材料は主剤に対して硬化剤の比率が高く、主剤2対硬化剤1という設定が多い為、硬化剤比率が高くなるほど比率混合を正確に行わないと硬化不良や初期不良が発生します。
硬化不良は施工後半日~1日で発生し、初期不良も1週間以内に発生するので、責任は施工者にすぐ降りかかります。
その為、責任問題を回避するために防水業界では計量器を使用するようになりました。

一度剥離が発生すると次回でも発生しやすくなります
↑塗膜剥離は一度発生すると次回の塗装でも発生しやすくなります

 

塗装工事は主剤に対して硬化剤の比率が低く、主剤9対硬化剤1もしくは15対1等の設定が多い為、硬化剤比率が低くなるほど比率混合が正確でなくても、硬化不良や初期不良が発生しづらくなります。希釈剤も希釈比率を高めると、防水材では深刻な問題が近々で発生しますが、塗装工事では数年という長い期間を経過してから発生します。
問題が発生するまでに数年かかることから、原因不明等で曖昧になってしまうことが多く、施工者責任を逃れやすいこと、これが塗装工事で計量器を使用する習慣がない最も大きな理由になります。

計量器を使用せず、目視や感覚で正確な計量を行えるか?については、仮に毎回同じ容器で同じ分量を希釈するのであれば、経験による感覚で多少の誤差内で出来る可能性もありますが、作業内容により容器が変わり、作業時間に合わせて使用塗料の分量も変える必要があるので、目分量・感覚に頼る方法では正確に希釈・混合を行うことは難しく、その行為により現在も過度の希釈による塗膜剥離が発生していることが、皮肉にもその問題性を証明していることになっています。

 

計量器を使用した正確な計量

計量器を必ず使用します

塗料を混合します

塗料混合作業には欠かせません

 

グリーンペイントでは計量器を使用し、塗料の正確な混合希釈を行っています。作業マニュアルの教育と徹底には長い時間と労力がかかりますが、社員全員が同じ規格のもとに希釈率を守り、高品質の塗装を行うことが出来ます。

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