トタン屋根に下地処理としての高圧水洗浄作業は有効か?
トタン屋根の高圧水洗浄作業は、作業区分からすると下地処理ではなく【汚れ落とし】としての作業区分となり、下地処理としてしまうと様々な問題があります。
前項までで解説しましたように、150kg/㎠の水圧では粉化した表層塗膜(チョーキング塗膜)と土埃程度しか除去できず、強力にこびり付いている付着物や変質塗膜を水圧のみで除去するのは不可能です。
ではなぜトタン屋根の下地処理として高圧水洗浄作業が広まったのでしょうか?
東北地方よりも南、無積雪地域に多い新生屋根(カラーベスト)と呼ばれる屋根は、セメントを主成分にした板状の屋根材を重ね合わせたもので、建材コスト・断熱性・メンテナンス性等がその地域特性に当てはまっています。
湿度の高い地域性から、ザラザラしている表面にコケや藻といった珪藻類がこびり付き、更に新生屋根基材から生じる粉化物も出てくるので、併せて除去する目的で高圧水洗浄作業が必要になります。
この新生屋根に用いられている高圧水洗浄下地処理が、トタン屋根の下地処理として転用されたのかもしれません。
塗料メーカーカタログにもトタン屋根下地処理として高圧水洗浄は推奨していません。
ワイヤーブラシやサンドペーパーなどでの下地処理後の高圧水洗浄はサビを誘発するため行わないように、と別メーカーカタログでは説明しています。
トタン屋根にはいろいろな付着物やサビ、浮き塗膜等があるので塗装前の下地処理が必要です。サビなどが発生している個所は強く研磨し、サビを完全に除去する必要があります。
サビを根本から除去すると、金属素地が露出します。露出した金属素地、表面にコーティングがない状態の鉄には、数時間でサビが発生します。
表面がコーティングされていない鉄は、ものの数時間でサビが発生してしまいます。
このことから、研磨下地処理後の高圧水洗浄作業は理論上施工出来ないことになり、仮に下地処理前に粉化塗膜や土埃を除去する目的だけに高圧水洗浄作業を行うのであれば、比較して研磨下地処理作業の方が屋根全面に研磨傷を付け、密着性向上作用とサビ・浮き塗膜等の付着物も同時に除去出来るので、結論として【トタン屋根に対して高圧水洗浄作業は非常に簡易的な下地処理作業】という位置付けになります。